【第50号】悲願の予約外来始動!
当方が宮城利府掖済会病院に赴任した当初、内科の常勤医が1名となった危機的状況が2回ほどあった。しかし逆境は糧になるのである。一人でなんでも診なければならないという状況はまたとないトレーニングの機会となった。大学時代より育んできた東洋医学的素養もあって当方は幅広い分野の病態を全人的に診ることができる独特の医師になった。当方はいわば宮城利府掖済会病院が作り上げたひとつの風変りな作品のようなものである。このようなトレーニングの機会を与えてくれた宮城利府掖済会病院には感謝している。
しかしながら、その全人的診療は何かと時間がかかる。配布資料を駆使したり、カルテ記載用のハンコを色々工夫したり、診察スタイルを色々工夫したり様々なスピードアップ化には努力してきたが、待ち時間が長いということが問題となっていた。この問題を解決できるのは予約外来である。
しかし当院のような小規模な病院で予約外来を開始するのは容易ではない。予約外来を開始するということは敷居を高くするということである。行けばすっと診てくれるという近所の病院というのが当院の立ち位置だが、予約外来はそういった利便性を失わせる危険がある。また、当院は小規模な病院であるがゆえに外来医師は通常の外来業務だけではなく救急搬送患者、ウオークインの急患、複数科受診の患者、入院患者など多様な患者に一人で対応しなければならない。そういう状況で当方が予約外来を開始することは他の常勤医への影響が懸念され、数年ほど前予約外来プロジェクトは金曜日の糖尿病外来を予約外来化するだけで終わってしまったのである。
そこで当方は様々なカテゴリーの患者の診療にどれだけ時間がかかるのか独自に統計をとった。その結果当方の外来は平均して1人10分を要すると算出された。これに基づき当方は1時間に4名の患者を予約とし、間に2名の予約外患者を診療することをスタッフに提案した。スタッフからは患者様から『なんで他の患者が先なのか』とクレームがくると心配の声があがった。そこで当方は外来の前半に予約外患者を診療し、後半の10時半~12時までの時間帯で予約患者の診療を行い12時半以降再び予約外患者を診察する方法を提案した。今度は当方が予約患者の診療に専念している間、循環器系の急患は誰が診るのかという心配や、また遅い時間帯に受診を希望する複数科受診の患者に対応できないとの声があがった。最終的には新規の体調不良患者が多いと思われる火曜日の外来の予約数を少な目にし、水曜木曜を最初の案通り1時間あたり4名とすることで決着した。そして当面予約外来は3か月処方の病状が安定した患者のみを対象とすることとした。
この12月より予約外来の受付を開始した。桃の花が咲く季節の来春には予約外来の患者の診療の花も咲くことだろう。処方期間が短い患者さんの御不満は・・・わかっていますよ~。
発行日:2022.01.17