【第16号】ワインエキスパートへの道は...
【院内診療情報】
◎5月より検査部で頸部血管エコー施行。
【診療にちょっと関係ある話】
◎ワインエキスパートへの道は...
○はじめに
院内および院外情報紙は地域連携室にて発行することとなり、片寄の個人的努力と医事課K氏の協力で発行してきた院内情報紙『ももんが』も今回で最終号となる運びとなった。『やまね工房のももんが』をみつけたのも『まずかったシャンベルタン』(ももんが8号参照)を飲んだのも同じホテル。やはりももんが最後の話はワインの話である。
○ワインエキスパート
あるレストランのソムリエにおそるおそる訊いた。『ワインエキスパートの試験って難しんでしょうね?』。『新世界のワインとフランスワインが区別できれば何とかなります。あとは試験勉強をするだけです』。『でも鼻炎で鼻がつまっていてワインの香りがわからないんですよぉ』。『ワインは色でわかります!』。その瞬間私は日本ソムリエ協会への入会を即決し、ワインエキスパートを目指すことにしたのである。
後日、このレストランで、注いだグラスワインの銘柄を伏せてもらい飲んでみた。注がれた赤ワインはタンニンの味が比較的強い。ガベルネソービニョンではない、ピノノワールでもない。グルナッシュかシラーあたりかと考えさらに検討。グルナッシュのフルーティーさ、濃い色調とは印象が異なる。そこで消去法で『シラー』と答えたら正解であった。少しは自信にはなったが、その後飲んだイタリアのネッピオーロとシラーや、ミュスカデとアリゴテなど区別には自信がもてなかった。これはワイン経験量を増やすしかないと考えた。そこで『ワインは2本を比較して飲むとよくわかる』というフランスワイン事典の著者山本博氏の言葉に従うことにした。同時に2本開けるのは色々と大変であるが、前の週開けた残りのワインと新たに開けたワインを比較することを思いついた。かくして私の食卓にはワイングラスが毎回2個置かれることとなった。
○例外規定
ワインを飲むのは週末のみと言う自己規制を行っていたが、私も仕事などで色々ある訳で、例外規定がどんどん増えていく。『当直明けは飲んで良い』、『時間外勤務を強いられたら飲んで良い』、『夜中に呼ばれたら飲んで良い』、『仕事量が多くて疲れたら飲んで良い』、『ストレスで疲れたら飲んで良い』、『車を運転せずワインバーに入るチャンスがあったら飲んで良い』...。こうなると私の現状ではほぼ毎日飲んで良いことになる。いつしか私の飲酒量は知らず知らずのうちに増えていた。昨年よりγ-GTPと尿酸値が軽度上昇。道場通い、早朝ランニングなどで適正体重を維持しても改善なし。クレアチニン値が1.0で腎機能にも不安があり、尿酸値を下げ腎臓保護作用のあるM社の降圧薬、魚の脂で作ったE社の抗動脈硬化薬を服用開始した。尿酸値は下がり、腎機能も改善したが、依然γ-GTPは軽度上昇したままであった。
○胸脇苦満(きょうきょうくまん)
ある研究会で座長を務めたあと、一人でワインバーに行き(車運転でないので例外規定に従ったわけである)、砂肝のサラダと厚切りの豚肉テリーヌにバローロ(イタリアの赤ワイン)を一杯、さらにデザートにスチルトン(イギリスの青カビチーズ)とソーテルヌ(フランスのデザートワイン)なんてことをやっていた。その夜、数日前より感じていた右季肋部の違和感が強くなった。漢方で言うところの肝疾患の症状として有名な『胸脇苦満』(きょうきょうくまん)の実体験である。翌日検査を行ったところ、GOT、GPTが上昇していた。アルコール性肝障害である。飲む前に黄連解毒湯や抗炎症作用のあるN社の高脂血症治療薬などを服用しアルコールの害を軽減しようかとも考えたが、やはりここは自らドクターストップをかけることにした。肝機能が正常化するまでは当面禁酒である。『そんなに飲んでいないのになぁ』と思ったが、いつの間にか『飲酒量を過少申告する』アルコール中毒の診断基準に当てはまっている自分に気がついた。
○おわりに
洋食好きで自らハーブの栽培もし料理もする私である。今後もワインとの付き合いは続くことであろうが、ワインとの関係は見直さなければならないだろうとは感じている。
◎『Dr.カタヨセ 今月のワイン』
アルバ デ ドムス
2004年 (2100円)
この3月酒飲みのスタッフが何人か退職した。『この方々には花束よりはワインだろう!』と考え花束代わりにプレゼントしたワインである。チリの赤ワインであるがフルボディの赤にプラムのような酸味のあるフルーティーさがあり美味しい。ラベルのオレンジ色と味が実にマッチしている。コストパフォーマンスは抜群。退職した方々の感想が聞けないのが残念である。
◎おわりに
これまでももんがをご愛読いただいた皆様に感謝する次第である。新たなる情報紙のタイトルが『ももんが』かどうかは未知数だが、新しい情報紙にも今まで同様エッセイは寄稿したいとは考えている。
(片寄 記)
発行日:2007.04.16