【第15号】硫黄島の感染対策
【院内診療情報】
◎ノロウイルス抗原検査:私費(2800円)で検査可能。
ノロウイルスはエタノール消毒無効。
85℃1分、漂白剤(ハイター)で失活。
◎土曜日外来の常勤医出番については不確定。掲示に注意を。
【診療に少し関係ある情報】
◎感染対策委員長からみた『硫黄島からの手紙』
第二次大戦末期の硫黄島での激戦を日本側の立場で描いた、クリントイーストウッド監督の映画『硫黄島からの手紙』は、安倍総理も観たようであり、アカデミー賞の呼び声も高くいま話題の映画である。映画そのものの評価はさておき、感染対策委員長という立場でこの映画を観るとまた別な意味で面白い。
赤痢:嵐の二宮君が演じる『二等兵・西郷』の友人は、胃腸症状に苦しみ、いつのまにか死亡していた。西郷は仲間から言われた。『赤痢で死んだその友人が使っていたトイレは使わないほうがいい』と。患者の体液にふれるなということである。標準予防策の観点からも理にかなった対応と感じた。
伝令係:硫黄島の南端摺鉢山と北部司令部壕は離れている。通信網が途絶えると戦況がわからずまとまった作戦がたてられない。また命令も錯綜する。『摺鉢山から総攻撃を中止し、北部の司令部に戻ってくるように』という栗林中将の命令が届かず、、『なんでもどって来たのか』と怒られる兵士。このように情報が錯綜していると現場は混乱する。災害を被った病院においても電話が使えなければこれと同様のことが生ずるであろう。映画では二宮君演ずる西郷が伝令係として孤軍奮闘していたが、災害現場においても情報伝達係『二宮君』が必要と感じた。
米国留学:米国留学歴のある栗林中将、ロサンゼルスオリンピックの馬術のゴールドメダリスト、バロン西。共に米国流の合理的精神の持ち主である。彼らの名誉より実利をとる合理主義は、中村獅童らが演ずる純粋日本の将校達の抵抗にあい、戦闘中まで不協和音は続く。感染対策もまさに米国流の合理主義がもたらしたもの。各病院で感染対策委員は現場の『中村獅童』と今日も戦っているのであろう。
36日間の激戦:5日で陥落すると予想された硫黄島が36日間米軍の猛攻に持ちこたえた硫黄島の激戦のことは中学の頃より知っていた。硫黄島の激戦についての私の理解は『硫黄島守備隊の勇戦ぶりはまさに天晴』、『硫黄島守備隊を指揮した栗林中将は歴史に残る名将』といったものであった。しかし36日間も戦闘が続いた理由はどうも別のようである。ニューズウイーク誌にあるように、兵士は勇敢に戦ったというよりは、脱出する道がないから戦わざるを得なかった。そして戦いの後半では栗林中将も日本軍を有効に動かす術をもたなかった。硫黄島の36日間の激闘をもたらしたのは、兵士の勇猛さでも、栗林中将の知略でもなかった。米軍が攻撃してくる一年も前から持久戦を想定し、地下壕を掘って築いた強固な地下陣地。そのシステムそのものが『歴史的な激戦』をもたらし『アメリカ軍を苦しめた』のだろう。しっかりしたシステムを構築しておけば中の人間が多少ヘマをしてもなんとかなるということなのだろう。硫黄島の戦いの中に感染対策、災害対策の極意をみた思いがした。
◎『Dr.カタヨセ 今月のワイン』
オジェ エ フィス ジゴンダス
2001 (3000円)
折しも『神の雫』(週間モーニング ワイン漫画 ももんが13号参照)でも第3の使徒の候補としてジゴンダスがとりあげられている。このジゴンダスは、小山6段の店『牛タン おやま』(どっちの料理ショーでも取り上げられた仙台の牛タンの名店)で昨年の11月開催した『第1回利府B級マリアージュ研究会』にて牛タン料理とワインのマリアージュを試すべく開いた南仏の赤ワインである。このジゴンダスの濃厚なフルーティーさと牛タン大和煮の相性は最高! 今でもあの時の味を思いだすと身震いがする思いである。
対がん協会のパンフレットに、『赤ワインはフレンチパラドックスがあり、動脈硬化によい』、『ワインを一日に1/3本までは発ガンの危険がリスクを上げない』。などと記載があった。しかし、それは1/3本までは発ガン危険が増さないというだけで体にいいという意味ではないだろう。またワインを1日にグラス2杯までは健康にいいという意味にも賛同しかねる。ワイングラス2杯でも翌朝頭は重い。ワイングラスに一杯でも翌朝頭痛がする。家族にはブルゴーニュ用のワイングラスは底が広いので、一杯であっても思いのほか量が多いのではないかと指摘された。それにグラス一杯だけと制限されると、ワインをなみなみとつぎたくなるのが人情でついついグラスに注ぐ量は多くなりがちである。しかしそうするとワインのアロマ(香り)があまり良くたたないようである。ブルゴーニュ用のグラスの底に赤ワインを少量、これを一杯。これが健康を損ねずかつワインのアロマを楽しめる方法のようである(これで満足できるかが問題だが)。
◎ももんがに投稿をお待ちしています。投稿は片寄まで。
発行日:2007.01.18