【第17号】ローズマリー肉
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守衛さんの岡本さんと、雑草だけが生えていた、病院北側の空き地を開墾(?)し、通称『岡本農園』をはじめて5年近くになる。これまで、バジルを栽培し、イタリアンフェアーと称し、ジェノバペーストのパスタやカポナータを作ったり、メキシカンフェアーと称し、コリアンダー(パクチー)を入れたサルサを作ったりしたこともあった(ももんが第2号、第11号参照)。今年『岡本農園』に植えたタイムとローズマリーの間に顔を近づけてみると、スパイスの香りがぷんぷん! まさに『肉!』という香りである。しかも苗のラベルにはステーキの写真が添えてある。視覚的にも『肉!』である。
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思い出すのは米国ワシントンのCIAの敷地の近くにある『ターキーラン』という谷間の森。ターキー(七面鳥)が走り回っているような場所という意味のその場所で開催されたフェスティバルで食べた鳥の丸焼きの美味しさは今でも鮮明に記憶に残っている。『鉄の棒に串刺しにして焚き火』で焼かれた『松の葉のようなスパイス』がふりかけてある鳥の『肉!』。以来、『鉄の棒に焚き火』、『松の葉のようなスパイス』は私の脳裏に焼き付いて離れない。
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『松の葉のようなスパイス』、すなわちローズマリーは癖のある香りではあるが、魚や肉料理との相性は抜群。最近よくやるのはスズキや鯛などの白身魚の切り身を、ローズマリーを含むスパイスの入ったビニール袋に入れて寝かせてから焼くというもの。料理研究家『ケンタロウ』のレシピであるが、簡単かつ美味で最近のわが家のヒット料理のひとつである。『ローズマリー肉』と合わせるなら、南仏のスパイシー、フルーティーかつ濃厚なグルナッシュ・シラー系統の赤ワイン、シャトーヌフデュパープあたりであろうか。
マンション住まいの私は、『鉄の棒に焚き火』は夢のまた夢。かつて夏になると『鉄の棒に焚き火』と心が動くことが何回かあったが、キャンプ場でも穴を掘って焚き火は禁。これまで『鉄の棒に焚き火』が実現することはなかった。しかし『利府の里山の風景』をバックに、うちの病院の駐車場裏ならば・・・。『収穫祭』などと称して収穫した『ローズマリー』をふりかけて『鉄の棒で焚き火』で鳥の丸焼きを作り、シャトーヌフデュパープの入ったワイングラスを片手に、『ローズマリー肉』をほおばる・・・。だめですよね・・・。病院にいて診療もせず『肉!』を焼いてワインを飲んでる医者なんて。でもそんな妄想がわいてくるような『利府の里山』と『岡本農園』の風景、そして『ローズマリー』の香りなのであった。
(P.S.院内情報紙ももんがの終了を惜しむ声が多かったので、新しい院内情報紙にももんがのコーナーとして文章を載せることにしました。よろしくお願いします。)
発行日:2007.07.01