【第25号】事業仕分けと零戦
蓮舫さんが大ナタをふるった『事業仕分け』では、税制の無駄をなくすという大義名分のもと、スーパーコンピューター、オリンピック強化費、はては漢方薬までが国家予算からはずされるという議論になった。やはり国にはお金がないのだ。病院もやはり限られた資金や人的資源でなんとかやり繰りしていくしかないのだなあとしみじみ思った。そう思うと私の脳裏には米国ワシントンのスミソニアン博物館でみた『零戦』が思い浮かぶ。
米国ワシントンのスミソニアン博物館のひとつ航空宇宙博物館の第二次大戦戦闘機の展示コーナーには米国グラマン社製ワイルドキャットの隣に零戦が展示してある。あれもこれも積んでという太った機体を大きなエンジンで飛ばすワイルドキャットに対し、零戦ははるかに馬力の小さいエンジンを搭載しているにもかかわらず、機体の無駄を極限まで削ぎ落としたスリムな機体でワイルドキャットを凌駕する高性能の戦闘機となった。限られた材料の中でやり繰りする『零戦の哲学』といったものに、日本人のアイデンティティーを見た思いがしたのである。限られた国家予算のなかてやりくりしなければならない昨今、我々は『零戦の哲学』に学ぶべきではないだろうか。
折しも、昨年夏ディアゴスティーニより『零戦をつくる』シリーズの発売が開始された。『零戦の哲学』を学ぶべく第1巻、第2巻を購入。それによると、三菱と中島飛行機に出された海軍の零戦設計への要求は苛酷なものであったらしい。それを実現したのは、東京帝大航空学科主席卒業の秀才で設計主務者の堀越二郎氏であった。堀越氏は社員が毎朝はこぶミルクの温度まで決めていたといういわば『几帳面の鬼』。この『几帳面の鬼』の指導のもと1グラムの無駄もみのがさない『厳しい』機体の軽量化が行われ、あのスリムな『零戦』が完成したのである。どうも『零戦の哲学』は『厳しい』ようなのである。年末から続けている部屋の整理がいまだに終わらない私など『零戦の哲学』にあってはメッタ切りであろう。『事業仕分け』で蓮舫さんにメッタ切りされた各省庁のように…。余談だがスリムで『厳しい』蓮舫さんって『零戦』に似ている気がする。一方いつもポシェットと沢山身につけ荷物の多い私は家族からすると『ワイルドキャット』そのものだと。
無駄をはぶく『零戦の哲学』からすると、ディアゴスティーニの『零戦をつくる』シリーズの定期購読も問題となる。付録の零戦模型を組み立てる時間があるとは到底思えず、定期購読すれば組み立てない零戦模型の部品が部屋中に散乱し整理が一段と遠のくのは目にみえている。悩みに悩んだが『零戦の哲学』を学ぶには『零戦をつくる』シリーズを定期購読しないのが一番というのが我が家の『事業仕分け』の結論である。
発行日:2010.01.18