公益社団法人 日本海員掖済会 宮城利府掖済会病院

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【第34号】メガホンを捨てる日が来るのか?

 最近自分が喋る英語を録音して聴いてみて驚いた。滑舌が予想以上に悪い、鼻が詰まったような声で聞き取りにくい。しかも語尾が不明瞭。これでは患者さんやスタッフは当方の言ってることを聞き取れないだろう。

 私は、患者さんやご家族に『もっと大きい声で話してください』といわれるのが嫌いである。漢方的診察で通常の医者よりはかなりエネルギーを使って診療しているので大きい声で喋ることを強いられると消耗してしまうからである。そこでメガホンを用いて耳の遠い患者さんに話をしているのではあるが、『もっと大きい声で話してください』には当方自身の喋り方の問題もあったようである。書く字が読めなくて迷惑をかけ、さらには声が聞き取りにくくて迷惑をかけ・・・なんとも最悪な存在だなあ当方は。宮沢賢治の『ほめられもせず苦にもされず』という当方のモットーとは真逆の存在である。生まれてきてすみません。

 なぜ鼻が詰まったような声になるのかを分析してみた。生来のずぼらな性格もあいまって口を十分開けずに口先だけで喋っているので、口蓋や鼻腔に音声を共鳴させることなく喋っているのが一因のようである。そこで頬肉を持ち上げ、オペラ歌手の要領で口蓋と鼻腔に音声を響かせるように喋ってみた。するとどうだろう、鼻に空気が出入りし鼻の通りがよくなってくるではないか。当方は副鼻腔炎・蓄膿であるが、アレルギー体質に加え喋り方が悪くて鼻腔に気が滞って蓄膿になったのかもなあ。

 オペラ歌手のような口調で口蓋と鼻腔に声を響かせて喋れば患者さんも良く聞き取れ、スタッフも良く聞き取れ、しかも蓄膿も治るかもしれない。蓄膿が治ればさらに声は聞き取りやすくなるだろう。一石三鳥である。当方がメガホンを持たずに診療できる日が来るかもしれない。しかしオペラ歌手のように口蓋や鼻腔に声を響かせるということは、オペラ歌手のように顔を醜くしわくちゃにして喋るということに他ならない。メガホンを捨てれば当方は新たなる迷惑な存在になるのである。生まれてきて本当にすみません。

発行日:2014.01.20