一般社団法人 日本海員掖済会 宮城利府掖済会病院

【第44号】眠れなくてもいい

『眠れなくてもいい。昼間の生活ができていれば』。

 かく言う当方も軽度の睡眠時無呼吸症候群があり睡眠の質が悪く熟眠が必要だと思ってきた。またここ数年夜間に目が醒めることが多くなりさらに眠らないといけないと思ってきた。しかし眠ろう眠ろうと考えはじめると興奮して眠れなくなるんだよなあ、これが。そういう時にはこう思えばよいということがわかった。『眠れなくてもいい。眼を閉じていれば』。

 不眠治療は眠れることを目標とするのではなく昼に生活に支障がなくそこそこに生活できていることを目標とする。エブワース眠気尺度という昼間の眠気の度合いを測る点数表を睡眠薬が欲しいという患者さんに点数をつけてもらうと、大半の方は昼間生活ができており睡眠薬を飲む必要がないということがわかった。『眠れなくてもいい。昼間の生活ができていれば』。

 眼を開き眼の中に光が入り脳内のメラトニンが減少し覚醒する。従って朝目覚まし時計が鳴るまで眼を閉じていればそこそこに脳は休まるのである。眠れないからといって、起きて本を読んだり、テレビを見たりというのは逆効果。眼に光が入らなければ眠れなくてもなんとかなるのである。最近スリープマスターという睡眠の状態をモニターしてくれ、睡眠が浅くなったところをみはからって目覚ましを鳴らしてくれるアプリを使っているが、その結果を見ると中途覚醒しても眼を閉じていればその後結構眠れていることがわかった。眼を閉じていることが睡眠を後押しするのである。『眠れなくてもいい。眼を閉じていれば』。

 そして眠れるようになるには眠れる体力が必要。昼は活動し体を鍛え、夜は休息といった生活のリズムをしっかり作ることが眠れるようになる基本である。このリズムを崩すような生活習慣をまず改めることが睡眠薬を飲む前に必要。昼寝は避ける。どうしても昼寝したいときは15分以内にとどめる。そして寝る前に興奮するようなことは避ける。スマホをみたり、心配事を考えたりするのは睡眠の敵。

 それでもどうしてもいつもの切れ味のよいベンゾジアゼピン系の睡眠薬が欲しいという方はちょっと待ってほしい。ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は切れ味はよいがいったん飲み始めるとやめにくく、転倒の原因ともなる。朝熟眠感が足りないという方には足りない体力を補うべく帰脾湯を朝2包飲んでみるのも一つの方法。それでも眠れないという方には習慣性がない安全な睡眠薬がある。ちょっと効きが弱かったり、口が苦くなったりが気になることがあるかもしれないが、そんな時は呪文を唱えよう。『眠れなくてもいい。眼を閉じていれれば』そして『眠れなくてもいい。昼間の生活ができていれば』。

発行日:2019.01.21