一般社団法人 日本海員掖済会 宮城利府掖済会病院

【第39号】太極図からみた日常生活

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 東洋を表現するシンボルとしてお馴染みの大極図。この図は大変意味深い図でこの図をイメージすることが漢方の奥義とも考えられる。先ず黒は陰。すなわち凝集する性質を表現している。一方白は発散する性質を表現している。まず真ん中を見るとこの陰と陽の境目は曲線で表現されている。直線ではない。複雑な万物の現象を白黒スパッと分けることができないことがこれで分かる。まだ黒の陰の中に白い丸があり、また白い陽の中に丸い陰がある。あらゆる現象は100%陰か陽かというわけではなく、陰の中に陽が内包され、陽の中に陰が内包されている複雑な存在であることが表現されている。そして黒の陰の外縁をたどっていくといつの間にな白の陽になり、白の陽の外縁をたどって行くといつの間にか黒の陰になっている。陰も極まればいつの間にか陽になり、陽が極まればいつの間にか陰になり得ることが表現されている。そして二つの陰陽は円の中に綺麗に収まっている。2つのペアでバランスがとれていることを表現していると考えられる。おそらく古代の中国の人たちは天と地、昼と夜、太陽と月と言った二つの相対する現象を観察してこのような考えに至ったのであろう。そしてこのような陰陽の関係をイメージすることが人生の様々な局面で役に立つ。

 まず患者さんと陰陽。医療は治療と養生で成り立っている。 治療の効果が出ないと患者さんは治療が悪いと考えるが、医者の側からすると患者さんが養生をおろそかにしているので治らないというふうに考えている。 投薬だけが医療と考えるのは片手落ちであることは大極図をイメージすればよくわかる。休肝日という言葉。一日だけアルコールのまない日があるからといっていい訳ではない。アルコール飲む日と飲まない日の陰陽のバランスは休肝日一日だけではとれない。大極図を思い浮かべれば休肝日は少なくとも34日が必要であるのは自明の理である。夜歓楽街で遊ぶことは陰の時間帯に陽の活動をするということ。体には負担になるのでほどほどに。夜間高血圧も陰の時間帯に陽の状態になるということであるから健康に良くない。健康食品やサプリメントを毎日摂取するということは偏食であり陰陽のバランスを崩すことにもなりかねない。このようなことも陰陽論を図示した大極図を見ればよくわかるのである。

 次に看護師さんと陰陽。嫌な仕事を頼まれたら、嫌な仕事の中に陽的楽しみを見出してみる。嫌な人と対峙しなければならない時は、嫌な陰的存在の中にも、陽的な良いところがあるのではと嫌な相手を見る。あるいは嫌だ嫌だ嫌だと思っているうちに陰極まって陽になり嫌いな相手が好きになるかも。疲れている時に疲れた疲れたと騒ぐと陽をひたすら発散してさらに消耗してしまう。疲れたときは騒がず、黙ってエネルギーのロスを最小限にとどめる陰的な存在となり働く。さすればエネルギーも回復させつつ仕事もはかどるというものである。夜勤は大極図をみれば大変な業務であることがわかる。陰的休息の時間帯に陽的な活動をしなければならないので体への負担は大きいといわざるを得ない。そして仕事と家庭。仕事は陽的活動。そして家庭は陰的な休息・・・であれば良いのだが育児や家事などで家庭も陽的な仕事の場になっているかもしれない。看護師さんの仕事と家庭の両立は大変だなとちょっと心配している。

 このように漢方医学のバックボーンとなっている古代中国の陰陽論のエッセンスを明快に示している大極図は日々の生活に有用な指針を与えてくれる。漢方をエビデンスのない苦い薬を飲まされる医療だと思ってる向きもあろうが、漢方の醍醐味は大極図に示された物の捉え方考え方にあるということをご理解頂ければ幸いである。平成28511日、片寄大『患者さんと看護師さんの為のやさしい漢方講座その1 総論』より。

発行日:2016.07.19