公益社団法人 日本海員掖済会 宮城利府掖済会病院

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【第13号】「神の雫」赤ワインの雨!!

【院内診療情報】

◎訪問診療部門強化
◎保険外診療での禁煙指導体制整備予定(片寄外来)

【診療に少し関係ある情報】

◎『神の雫』雑感
 『神の雫』とは週間モーニングに連載中のワイン漫画である。主人公 神咲雫はワインの知識には乏しいが、世界的なワイン評論家 神咲豊多香の息子であり、親譲りの天才的味覚を武器に、当代一のワイン評論家 遠峰一青を相手に、父のワインコレクション相続の条件『12使徒ワインの解明』を競い合う。この話を軸に、神咲雫の所属する太陽ビールワイン事業部の同僚でソムリエ見習いの紫野原みやび、イタリアワイン通でイタリア長助こと本間長助などとのやりとりで『神の雫』のストーリーは展開していく。通常評価の低い、ボルドー3級の、シャトー ボイド カントナックが、2001年のみ、『天、地、人』その全てが奇跡的にかみ合い、1級シャトーに匹敵する傑作を生み出したという、ブランド病院ではない我が『宮城利府掖済会病院』にも大変励みになる話もある。ワイン愛好家以外の方にも楽しめる内容となっている。

 デキャンタージュ: 『神の雫』第1巻では、ドメーヌロマネコティー(DRC)のリシュブール(ロマネコンティーに次いで高価なDRCの赤ワイン)をまずいと言う客に対して神咲雫が神業のようなデキャンタージュ(ワインを急速に酸化させたり澱を取り除く目的で別の容器に移す操作)で百の花の香りを持つとされるリシュプールの実力を遺憾なく発揮させた。そこで私もデキャンタージュ! キュベミティークというスーパーでもよくみかけるラングドックの赤ワインを一時間前に開栓。半分をデキャンタージュしてみた。開栓だけのキュベミティークはフルーティーさ、タンニンの渋み、ミネラルの味もそれなりにあった。しかしデキャンタージュしたキュベミティークからはフルーティーさ、渋み、ミネラル感など全てが無くなっており、『頭の痛くなりそうな安い赤ワイン』の味になっていたのである。このあまりの劇的変化には驚くばかりであった。神咲雫のデキャンタージュからは『お花畑』『島』『仮面舞踏会』などが生み出されて行くが、デキャンタージュの適応基準を持ち合わせていない片寄のデキャンタージュからはその後も『頭の痛くなる安いワイン』が次々と生み出されていく。当然息子の食料赤ワインゼリーは今日も大量生産されている(ももんが11号参照)。

 赤ワインの雨: 『目覚めよ、バッカス!』。『神の雫』の主人公神咲雫は、サンコム(フランス コート デユローヌの赤ワイン)をグラスに注いで30分待ったあとでグラスを高々と持ち上げこう叫んだ。するとどうだろう。開いていない(のみにくい)サンコムは、バリ島を彷彿させる見事な香りと味を出すすばらしいワインになったのである。実にかっこいいシーンである。神咲雫は、しばしばワイングラスを高々と掲げワインの色調を調べる。それにならい、私もイタリアの赤ワイン ヴィノ ノビーレ ディモンテプルチアーノの色調を調べるべく、ワイングラスを頭上にかざしてみた。その直後私の頭上から赤ワインの雨が降り、白のTシャツはワインレッドに染まってしまったのである。『もしレストランでこの惨事が起こったら・・・』と想像しただけでぞっとした。

 酒の神バッカスとの対峙: 神咲雫の父で世界的ワイン評論家の神咲豊多香は膵臓癌で永眠する。しかも前途のDRCのリシュプールを飲みながら死んで行くのである。ワインの謎を解こうとする者は酒の神バッカスに飲み込まれる危険と背中合わせということなのであろうか。先日、某先生とクリュックのシャンパンを飲んだ時、『シャンパンは6000円まで』のガイドラインを引いている私には(モモンガ11号参照)、クリュックのシャンパンは初体験で、余っているクリュックを『もったいない』と思い飲みほし、不覚にも学生時代以来20年ぶりに吐いてしまったのである。こんな酒に弱い私一人ではとてもバッカスとは対峙できない。
 そこで考えたのは、『ワイン診療連携』である。折角世のソムリエやワイン評論家が自身の肝臓や膵臓を犠牲にして美味しいワインを見つけ出してくれているのである。ワインの選択に当たっては、彼らのおすすめを参考にすべきと最近思うようになった。この『ワイン診療連携』を通してピックアップされたワインの中より『個人的興味』に合致したワインを選ぶのである。さらに『平日は極力休肝日とする』、『飲むワインは一日グラス2杯までという量的制限をかける』。これが私の現在の対バッカス対策である。しかし飲むワイン量がしばしばグラス3杯となる。ガイドライン遵守のコンプライアンス(どれだけガイドラインを守れるか)が今後の私の運命を左右するということであろう。

 バッカスの教え: ワイン研究を通して、ワインは常に変化する生き物のような存在であり、『諸行無常』『色即是空』なのであるから、『美味しいワインを確実に飲む』ことはできないことを知った。一級シャトー、特級畑、ビンテージ・・・そういった条件は美味しいワインに巡り会う確率の高さを示すが、目の前にあるワインが美味しさを保証するものではないし、逆に飲んでみなければ『この味でこの価格』(モモンガ11号参照)の感動を得ることもできない。なんでも(あきらめずに)『やってみなければわからない』というのがバッカスの教えなのであろう。余談であるが、この間私の人格はすっかり『酒飲みオヤジ』となり『プライドもなくなる』など大きな変貌を遂げた。バッカスの影響力の大きさを痛感せざるを得ない。

◎ももんがに投稿をお待ちしています。投稿は片寄まで。

発行日:2006.10.18